タマラ・ロホのインタビュー/"About the HOUSE"より

 イースターの4連休、特に旅行の予定も入れておらず、ずっと天気がいいのに外にも出歩かないぐうたらな時間を過ごしている。たまにはゆっくりした時間を過ごすのもいいものだ。
 先日、ロイヤルオペラハウスから会員向けの季刊誌が送られてきたので、パラパラとめくっている。そんな中にタマラ・ロホのインタビュー記事があってなかなか面白かったので、僕自身のための覚え書きも兼ねて、ここに要約を載せることにした。タイトルは"Style & substance"、「方法と内容」とでも訳すのがいいかな。
 ちなみに翻訳には多分に僕の意訳が入っています。


 まずは彼女が自身について語った言葉。
「私はただの子どもで、何にでも好奇心旺盛だし、人に喜んでもらいたいとも思っています。」
「私を異常に野心的だと考えるのは間違いです。私はきっちりと規律は守るし意欲的でもありますが、それは私が自分自身に対して常に厳しいからです。私は簡単に満足することはありません。」

 来シーズンの"Jewels"で彼女はエメラルドを踊る。これについて、「普段は一番に練習に来て、午後8時半には夕食を食べに行けるよう、早く練習を切り上げる」ことにしているロホも、「いつか"Jewels"の最後のダイヤモンドを踊れるなら遅くまで練習することを厭わない。」

 ロホは来シーズン"Marguerite and Armand(マルグリットとアルマン)"を踊る。ロホの他には過去にフォンテインとギエムの二人しか踊ったことのない(訳注:僕は全然詳しくないのだけれど、多分ロイヤルバレエでは、ということだと思う)この役を踊ることについて。
「私は皆さんと同じようにフォンテインとギエムを尊敬していて、ギエムがマルグリットを踊るのも何度も見ています。でもギエムと私は余りにもタイプが違うので、それが重荷になったり気持ちが後ろ向きになることはありません。それに、私が一番に考えていることは元の物語です。夢見る10代だったころ私は椿姫に熱中していて、デュマの小説も読んだし、映画も見ればオペラも聴きました。私のインスピレーションの元はそこであって、前任者のダンサーではないのです。これを傲慢だと捉えてほしくはないのですが。」

 このバレエをアシュトンが振り付けたとき、フォンテインは40代半ばで、パートナーのヌレーエフは20歳そこそこだった。しかしロホはこの作品を、年上の女性と若い男性の年齢差ゆえの悲恋だとは考えない。
「私にとって、これは普遍的な人生の愛の物語です。マルグリットは自分が結核で死にかけていると分かっていますが、彼女はアルマンを愛しようとします。アルマンが若さとエネルギーと力の限りに彼女のもとに飛び込んできて、彼女はそのために自分が死から逃れて生き延びられるのではないかと思います。彼女はこの希望にしがみつきます。そしてこれこそが、この物語の喜びであり苦しみでもあるのです。私は今回、セルゲイ・ポルーニンをアルマン役として共演できることを非常に幸運に思います。彼には爆発的な若さとエネルギーと力がありますからね。」

 アシュトンについて。
「アシュトンには怖いステップは一つもありません。もちろん簡単だと言うわけではないのですが、全てがただ音楽に従って流れていくように感じます。」

 マクミランについて。
「マクミランの素晴らしいことの一つに、彼が踊り手に個別の表現の余地を残したことです。全てが厳密に固定されている訳ではないので、新しい人は新しいものを作り出すことができます。単に過去の模倣しか許されないならバレエは古くさくなってします。でもロメオとジュリエットやマノン、マイヤーリンクといった作品ではそういうことはありませんし、だから踊り手がこれらの作品を好む理由でもあります。」

 同じような創造の余地を古典作品に見出すのはより難しい。
「バレエ作品に対する私の解釈は、私自身の人間としての成長とともに発展し続けます。若いときには人は全てを本能に従って行います。20代になると全てを詰め込むことに必死になります。30代になると、より少ない要素でより多く表現するにはどうすればいいかということに気付き始めます。全てを明らかにする必要はないのですから("You don't need to prove anything.")。」
「眠れる森の美女のオーロラ姫は物語の中で人物として成長しないので、演じるのが難しい役です。彼女は名付けられたときから全てが身に備わっていて、完全な存在なのです。彼女は人というよりも完璧さの象徴です。この役に対してできることと言えば、3つの幕の間でコントラストを際立たせることくらいです。第1幕の元気一杯の少女、第2幕の夢の映像、第3幕の王族にふさわしい人物といういうように。」

 白鳥の湖のオディールの方が、彼女にはより魅力的な役柄であり、彼女はその神秘を心理的に解き明かそうとする。
「重要なのは、父親であるロットバルトとの関係だと思います。彼は彼女にとって、喜ばせなければならない相手であり、また共に生きていく相手でもあります。彼女はジークフリートとのやり取りと、その勝利を楽しみます。なぜならば、それによって自分が報いられることを知っているからです。彼女はジークフリートをもてあそびますが、根っからの悪人でもありません。虐待的な親に育てられた子どもは、生き延びるために悪くならざるを得ないものですが、オディールはそうではありません。」

 現役の振付家との活動にも熱心なロホが尊敬する、Kim Brandstrupについて。
「次回は更に先へ進むことになると思います。彼は同じことは繰り返しませんから。」

 彼女は"Stress in the Performing Arts"という内容で博士号取得にも取り組んでいる。
「私は、スタジオでは素晴らしいことをできる才能ある人たちの一部が、舞台ではどうして同じことをできなくなってしまうのかとずっと思い続けてきました。」

 バレエ団を運営したいという長年の願望もある。
「私は破壊者ではありませんが、革命家ではあります。百年も前のトレーニング方法を今も使い続ける理由はありません。世の中の全ては、バレエの振付けも含めて変化しています。技術的な要求はこの10年間ですら増大しています。スポーツ科学の分野から人体の能力について学べることはたくさんあります。また、バレエは社会から安穏と孤立していてはいけません。バレエはもっと芸術の責任を果たすことに踏み込まなければなりません。バレエが表面的で変わったことばかりに没頭していることに対して、人々がもう見たくない、我慢がならないと考えているということを直視し、バレエに反映していく必要があります。私は”大ボス”になりたいのではなくて、バレエを次の世紀につなげていきたいのです。」
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by voyager2art | 2011-04-25 08:40 | バレエ


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