ウェールズ旅行(第一日:ホリヘッド)

 大事な友人が来月日本に帰国するのを前に旅行を計画して、ついでに僕も一緒にどうかと誘ってくれた。友人は古代遺跡巡りと山登りがしたいということで、行き先は相談の上でウェールズに決定。出発直前になって最低限の行き先や宿をバタバタと決めた他は、かなり大雑把な計画のまま、いざ出発。とりあえず初日は、ウェールズの西北端にあるホリヘッド(Holyhead)という街へ向かった。一度チェスターという、ウェールズとイングランドの境界に近い街で列車を乗り換える。
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 途中列車が遅れて、結局ロンドンから5時間ほど掛かって目的地のホリヘッドに到着。ホリヘッドはアイルランドのダブリンへのフェリーが発着する港街で、気取らず明るい表情の、のんびりした雰囲気の漂う街。
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 ここでパブに入り、お昼ご飯にフィッシュアンドチップスを選んだ。お腹が空いていたので写真も撮らずに食べ始めたけれど、チップスはともかく、魚のフライの方はサクサクの衣としっとりした白身の魚がとてもおいしかった。

 お腹が満たされたらぶらぶらと街歩き。といっても、大きな街ではないので、メインストリートはちょっと歩くと終わってしまう。その外れには、ローマ時代の砦跡があり、今はそこに教会があった。
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 さて、ここからが難題。このホリヘッドがあるウェールズのアングルシー島には、古代の遺跡が無数にあるそうで、ホリヘッドの近くにも3千年から4千年前に作られたスタンディング・ストーンの遺跡がある。ここへ行くための情報を得ようと四苦八苦し、ようやくローカルバスも通らない場所だと分かってタクシーに乗り込んだ。向かった先はPenrhos Peilwという場所。

 ホリヘッドの街から離れて、車がすれ違うのも苦労しそうな細い道を進むと目指す遺跡があった。ちょっとした民家が建っているそばの草原に石の板が二本、地面に突き立っている。周囲は吸い込まれそうなほどに静かで、風の音が時折止むと、あたりはすっと完全な静寂に落ち込む。サイトからはホリヘッド山がよく見え、独特の威厳のある姿でこのサイトを見下ろしている一方で、ぐるっと後ろを振り返るとわずかに海も見える。
 広い空間の中に唐突に立つ二本の石は、人工的でありながら、当たり前のようにこの風景を自然に構成しているようにも見える。この二本の石は、いったい何を象徴していたのだろう。僕には何かの門をかたどっているようにしか見えなかったけれど、だとすればいったい何を区切り、何をつないでいたのだろうか。広い静寂の中で神秘感を纏って立つその姿からは古代の人々の精神の営みが垣間見える気がして、この場所自体の不思議な雰囲気を一層謎めいたものに深めていた。
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 ここは、今回のウェールズ旅行の中でも一番印象に残った場所だった。

 この次の目的地に向かおうと、先ほどのタクシーのドライバーにもらっていたタクシー会社の番号に電話して、タクシーを呼んだ。ところがここで問題が発生。タクシー会社の人にどんなに一生懸命説明しても、僕たちが今いる場所を理解してもらえない。少し離れた場所にキャンプ場があったので、キャンプ場の近くだと言っても、「アングルシーにはキャンプ場がたくさんあるのよ」と言われる始末。これには本当に困った。街まで歩いて帰ると1時間近く掛かりそうな場所で、歩けなくはないとはいえ、できれば歩くのは避けたい。
 仕方ないので一度電話を切り、キャンプ場の名前を確かめようとそちらへ向かって歩き始めたとき、驚くべきことにこのサイトへ来たときに乗ったのと同じタクシーが、なんと目の前に現れた。まるで出来損ないのコメディーのような話だけれど、運ちゃん曰く、ちょうどキャンプ場へ客を送っていった帰りなのだとか。あまりの運の良さ、タイミングの良さに苦笑しながらも、ほっと安堵して次のサイトへ向かった。


 次に向かったのは、Trefignath burial chamberと呼ばれる場所。作られたのは4~6千年前と推定されていて、埋葬用の石室("burial chamber")が時代の経過の中で3つ作られた。今残っているのは、その中のもっとも新しいもの。
 この場所は車道脇にあり、すぐ近くに何かの工場や鉄道の線路もあるので、さきほどの場所のような神秘感はもうない。それでも、非常に整った構造物からは、古代の人々の精神活動の痕跡がかすかに読み取れるようだった。
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 このサイトの周囲の風景はこんな感じ。この場所を正確にタクシー会社に伝えられる自信は全くなかったので、あらかじめタクシーの運ちゃんに、30分後にここに戻って来てもらうように伝えていた。
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 時間通りに戻って来たタクシーに乗って鉄道駅に戻り、宿泊地であるバンガーに向かう列車に乗り込んだ。

 この列車移動で、僕は一つどうしてもやりたいことがあった。それが、この写真を撮ること。
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 この駅は、世界で一番長い名前を持つ。Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochはランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホと読み、ウェールズ語で「赤い洞窟の聖ティシリオ教会のそばの激しい渦巻きの近くの白いハシバミの森の泉のほとりにある聖マリア教会」という意味なのだとか。実は昨年アイスランドの火山噴火で欧州の空港が軒並み閉鎖され、空路移動が大混乱に陥ったとき、僕は仕事でアイルランドのダブリンにいた。仕事が終わってさあ帰ろうと思ってもフライトはキャンセルされていて帰れない。代替手段としてフェリーでホリヘッドに渡り、鉄道でロンドンまで帰ってきたのだけれど、そのときにたまたま目にしたこの駅名に、思わず我が目を疑った。あまりにも意表を突かれて写真を撮ることもできなかったので、いつかここに戻って来たいと思っていた。
 この場所には今回の旅の中でもう一度戻って来たけれど、その詳細はまた後の記事に書くことにする。
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by voyager2art | 2011-08-10 08:30 | 旅行記


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